性感染症(性病)
性感染症(性病)の原因となるのは、細菌やウイルス、原虫などで、それらが性行為中に性器、肛門、泌尿器、口腔などに侵入することによって感染します。
主な性感染症には性器クラミジア、淋病、尖圭コンジローム、梅毒、HIV、外陰ヘルペスなどがあります。これらの病気は最初が無症状であったり、軽かったりすることが多く、気付かないうちに進行したり、ほかの人に伝染させてしまったりするケースが多いのです。
自分の体を護り、他の人に伝染させないためには、早期発見のための検査も重要です。
性行為の後、少しでもおかしいなと感じたら、恥ずかしがらずに検査をうけるようにしましょう。
当院では性感染症の検査・治療にも対応しています。
婦人科の受診について
性感染症は、初期には症状が軽く、無自覚のまま進行してしまうケースが多く、気付いたら進行していたということになりかねません。ご自分の体に将来不妊の原因となるような後遺症が残るケースもあり、また他の方へ伝染させてしまうこともあります。性行為があった後、少しでも異常を感じるようなことがあったら、恥ずかしがらず婦人科をお訪ねください。
よくあるちょっとした変化では、「量が増える」「色が変わる」「臭いがする」などおりものの変化、痒みを感じる、水ぶくれやいぼなどができるといった外陰部の変化、痛みや出血など性交時の変化などがあります。
おりもの変化に注意
おりものとは、女性の性器からでる様々な分泌物などの総称です。子宮内膜からの分泌物、子宮頸管からの分泌物、腟壁からの分泌物や老廃物、バルトリン腺や皮脂腺などからの分泌物などがその主なものです。
個人差もありますが、通常は透明か白っぽい色をしていることが多いのですが、何か女性器周辺に異常があった場合、色や臭いが変化することが知られています。
おりものは女性の健康状態が容易にわかる目安のようなものですので、ご自身で状態を観察して、少しでもおかしいところがあれば、すぐに婦人科を受診してください。
当院の治療
性感染症の種類によって異なります。一般的には問診の後、おりものや性器の状態の内診、各種血液検査や尿検査、腟分泌液検査などの検査が主なものです。
ほとんどの性感染症は薬で治すことができます。薬には内服薬や塗り薬などのほか、腟内に挿入しておく薬などもあります。
ただし、HIVなど現在のところ治療が非常に難しいものや、手術が必要になるケースもあります。
そのため、まずはコンドーム装着などによる予防が大切です。また異常を感じた場合にはすぐに婦人科を受診してください。
性感染症の種類
性感染症の多くは、国がその発生動向を調べて、その結果を国民にフィードバックして蔓延するのを抑えるべき伝染病とされ、報告が義務づけられている五類感染症に分類されています。主なものとしては以下が挙げられます。
クラミジア感染症
性感染症のなかでもポピュラーなもので、クラミジア・トラコマティスという細菌に感染することによっておこります。この細菌は目に感染した場合はトラコーマになりますが、性器などに感染した場合はほとんど自覚症状がないのが特徴です。
そのため、気付かないうちに進行してしまい、子宮や卵巣などが炎症をおこすと不妊の原因となることもあります。
少ない自覚症状のうちでも、おりものの増加、頻尿や排尿痛、性交後の出血などをおこすことがあります。また進行した場合腹痛を伴うことがあります。 また淋病と混合感染する場合があります。
外陰ヘルペス
性器にヘルペスウイルスが感染することによっておこります。女性の場合は性器や肛門周辺、口の周辺などに水疱ができ、痛みをともなうことも多くあり気付きやすいものです。さらに腟内や子宮頸管、膀胱にまで水疱ができることもあります。
ヘルペスのやっかいなところは、いったん感染するとウイルスが体内からなくならないところです。感染したウイルスは最初の症状がおさまっても、神経をつたって体の奥深いところで潜伏しています。現状では、ウイルスを死滅させる療法がありませんので、体調が崩れたときなどに活動を再開することがあります。
妊娠中にヘルペスが発症すると、産道をとおして赤ちゃんに感染してしまうこともあります。
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルスに感染することによっておこる病気です。女性の場合は外陰部、腟、子宮頸部などに薄ピンクやグレーのいぼができます。いぼが大量にできると発見しやすいのですが、少量のいぼが性器内部に近いところなどにできると発見が遅れることもあります。
自然治癒することもあるのですが、再発するケースも多いため、性器周辺などに急にいぼが増えたなどの変化に気付いたらすぐ受診して徹底的に治療しましょう。
トリコモナス腟炎
性行為やお風呂の椅子などからもうつることのある病気で、トリコモナス原虫という寄生虫が性器内に寄生することによっておこります。
おもな症状は、おりものの増加、臭い、性器周辺のかゆみなどです。
淋菌感染症
日本でもポピュラーな性感染症で淋菌に感染することによっておこるものです。男性の場合は排尿時に強い痛みなどを感じ気付きやすいのですが、女性の場合はほとんど自覚症状がないことも多いので注意が必要です。
気がつかないまま進行すると、ひどい下腹部痛などとともに、子宮や卵管が炎症をおこし、不妊の原因となったり、子宮外妊娠を起こす原因となったりします。
またクラミジア感染と混合感染する場合があります。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌に感染することによっておこります。感染すると性器周辺などにしこりのようなものができ、全身に湿疹が出ます。しばらくするといったん症状がおさまるため治ったとおもわれがちですが、適切な治療をしていないと内部でどんどん進行し脳や心臓に重大な合併症がおこることもあります。
性行為後にしこりや湿疹が出た場合には、すぐに受診して検査をうけてください。
HIV/エイズ
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した場合、数か月から10年程度でエイズを発症します。エイズになると、ふだんほとんど害のないウイルスや細菌でも免疫が働かず、重症化することがあります。研究途上であり、薬もいくつか開発はされていますが、現状では有効な治療薬がまだ存在していませんので、発症を遅らせるか対症療法を行うしかありません。
以上、主な性感染症のほか、B型肝炎やC型肝炎なども性感染症に分類されることがあります。その他にも性行為を原因とする病気がありますので注意が必要です。
100%有効という予防方法は現状ありませんが、コンドームの着用が効果的であることは確かです。またパートナーを限定することや性行為の前後、体の清潔を保つことも有効な予防手段のひとつです。
いずれにせよ、少しでも異常を感じたら、すぐにご相談ください。